法的支援:経営者が知っておくべき債権法改正(その3)

2021.07.5

法的支援

今回は、以下のポイントについて解説します。

4 債権譲渡
5 定型約款(新設)
6 債務不履行による損害賠償
7 契約の解除

4 債権譲渡
①譲渡制限特約が付されていても債権譲渡の効力は妨げられないこととなりました。但し、預貯金債権については、譲渡制限特約について悪意重過失の譲受人その他の第三者に対して、譲渡制限特約を対抗できます。
②譲渡制限特約付債権が譲渡された場合の債務者は、譲渡制限特約について悪意重過失の譲受人その他の第三者に対して、債務の履行を拒むことができ、譲渡人に対する弁済等を対抗できます。但し、債務者がかかる第三者から相当期間を定めた譲渡人に対する履行の催告を受けた後も履行しない場合は、この限りではありません。
③譲渡制限特約付債権が譲渡された場合の債務者は、債権全額に相当する金銭を履行地の供託所に供託することができ、譲受人がその還付を請求できます。
④譲渡制限特約付債権の譲渡人について破産手続開始決定があったときは、譲受人(譲渡制限特約付債権全額の譲渡を第三者に対抗できる場合に限る)は、譲渡制限特約について悪意重過失であっても、債務者に対して債権全額に相当する金銭を履行地の供託所に供託させることができます。

5 定型約款(新設)
①定型取引(特定の者が不特定多数の者を相手方とする取引で内容の全部又は一部が画一的であることが双方にとって合理的なもの)を行うことを合意した者は、(1)定型約款(契約内容とすることを目的として特定の者が準備した条項の総体)を契約内容とすることを合意した場合又は(2)定型約款を準備した者が定型約款を契約内容とすることを予め相手方に表示(電車バスの運送契約等については公表)していた場合は、定型約款の個別の条項に拘束されます。但し、定型取引の態様・実情及び取引上の社会通念に照らして相手方の利益を一方的に害する契約条項であって信義誠実の原則に反するものについてはこの限りではありません。
②定型約款の準備者は、(1)変更が相手方の一般的利益に適合する場合又は(2)変更が契約目的に反せず変更の必要性・変更内容の相当性・変更する旨の定めの有無内容等に照らして合理的である場合は、相手方と個別に合意することなく契約内容を変更できます。この場合、定型約款準備者は、定型約款を変更する旨、変更後の定型約款の内容及び変更の効力発生時期を、インターネット等により周知しなければなりません。

6 債務不履行による損害賠償
債務不履行が債務者の責めに帰すことができない事由による場合は、損害賠償を請求することができないことが明示されました(従前は履行不能の場合についてのみ規定)。債務者の責めに帰すべき事由の有無は、債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして判断されます。また、原始的不能(契約成立時点で既に履行不能)の場合であっても、債務不履行に基づく損害賠償請求ができることが明文化されました。

7 契約の解除
①債務不履行が債務者の責めに帰すべき事由によらない場合であっても、相手方は、相当期間を定めた履行催告をした上で契約を解除できることになりました。但し、債務不履行が契約及び取引上の社会通念に照らして軽微である場合はこの限りではありません。
②債務全部の履行不能、債務者の全部履行拒絶、債務一部の履行不能又は債務者の一部履行拒絶の場合の契約目的の達成不能等の事情がある場合は、無催告解除ができます。
③以上にかかわらず、債務不履行が債権者の責めに帰すべき事由による場合は、債権者は契約を解除できません。