法的支援:経営者が知っておくべき債権法改正(その2)

2021.06.14

法的支援

今回は、以下のポイントについて解説します。

1消滅時効
2法定利率
3保証

1 消滅時効
①権利行使できるときから1年ないし3年であった職業別の短期消滅時効(例えば飲食代金請求権は1年)及び権利行使できるときから5年であった商事時効は廃止され、「権利行使できるときから10年又は権利行使できることを知ったときから5年」に統一されました。
②損害賠償請求権は債務不履行に基づくもの(権利行使できることを知ったときから5年、権利行使できるときから10年)と不法行為に基づくもの(損害及び加害者を知ったときから3年、不法行為のとき(=権利行使できるとき)から20年)がありますが、生命・身体の侵害による損害賠償請求権については、「知ったときから5年、権利行使できるときから20年」に統一されました。
③時効の中断・停止制度が更新・完成猶予制度に整理され、天災等による時効完成猶予期間が2週間から3ヶ月に伸張され、当事者間の協議による時効完成猶予(合意時から1年間又は1年未満の協議期間経過時まで)が新設されました。

2 法定利率
民事法定利率(年率5%)は年率3%に引き下げられ、商事法定利率(年率6%)は廃止されて民事法定利率(年率3%)に統一されました。但し、法定利率は3年毎に見直されます(変動制)。損害賠償額算定における中間利息控除にも法定利率(損害賠償請求権発生時)が適用されます。

3 保証
①極度額の定めのない個人根保証は、貸金等債務の根保証に限らず、すべて無効となります。
②個人根保証の元本確定期日(保証期間)は、引き続き貸金等債務の個人根保証についてのみ、原則3年(元本確定期日の定めは最長5年)とされます。貸金等債務以外の個人根保証についての元本確定期日(保証期間)には引き続き制限がありません。
③元本確定事由(主債務者又は保証人の強制執行又は担保権の実行開始・死亡・破産手続開始決定)は、貸金等債務の個人根保証に限らず、すべての個人根保証に適用されます(但し、貸金等債務以外の個人根保証については主債務者の強制執行又は担保権の実行開始・主債務者の破産手続開始決定を除く)。
④事業用貸金等債務の第三者(経営者等による保証を除く)による個人保証(個人根保証を含む)については、保証契約締結前1ヶ月以内に作成された公正証書で保証人が保証意思を表示していなければ効力を生じません。「経営者等」には、主債務者が法人である場合の理事・取締役・執行役及び総株主の議決権の過半数を有する者が、主債務者が個人である場合の共同事業者及び現に従事している主債務者の配偶者が含まれます。
⑤事業用債務(事業用貸金等債務に限らない)の個人保証(個人根保証を含む)については、主債務者が保証人に対して一定の財務情報等を提供しなければならず、情報不提供又は事実と異なる情報の提供により当該財務情報等を誤認して保証した保証人は、主債務者が情報不提供又は事実と異なる情報の提供について悪意有過失の場合に限り、保証契約を取り消すことができます。
⑥債権者は、個人保証の主債務者が期限の利益を喪失した場合は、期限の利益喪失を知ったときから2ヶ月以内にその旨を個人保証人に通知しなければならず、通知を現にするまでに生じた遅延損害金について保証債務の履行を請求できません。
⑦債権者は、主債務者の委託を受けて保証した保証人(法人を含む)から請求があれば、主債務者の主債務の元本・利息・違約金等についての履行状況(不履行の有無、残額、残額のうち弁済期が到来しているものの額)について情報を提供しなければなりません。