法的支援:労務管理上のチェックポイント(完)

2021.05.31

法的支援

シリーズ最終回の今回は、以下のポイントについて解説します。
⑪ 派遣労働者への対応は適切に行っていますか(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律40条、40条の2ないし40条の6)?
⑫ 子の看護休暇及び介護休暇を時間単位で取得させていますか(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律16条の2、16条の5)?
⑬ 高齢者雇用対策を行っていますか(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律9条、10条の2)?

11 派遣労働者への対応は適切に行っていますか?
派遣労働者の受け入れは、原則として、派遣可能期間(事業所単位で3年)に限られます。但し、事業場の労働者の過半数で組織する労働組合(かかる労働組合がない場合は労働者の過半数の代表者)の意見聴取手続を行うことにより派遣可能期間をさらに3年延長できます(その後も同様)。この場合でも、原則として、事業所における同一の組織単位で同一の派遣労働者を3年を超えて継続して受け入れることはできません(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律40条の2、40条の3)。
事業所の組織単位の同一の業務に継続して1年以上有期雇用派遣労働者を受け入れた場合、派遣期間終了以後に当該同一の業務に従事させる労働者を雇い入れるときは、原則として、当該有期雇用派遣労働者を遅滞なく雇い入れるよう努める必要があります(同法40条の4)。
事業所において1年以上継続して同一の派遣労働者を受け入れた場合、当該事業所において労働に従事する通常の労働者の募集を行うときは、当該事業所に掲示する等の措置により、募集事項を当該派遣労働者に周知する必要があります。同一の組織単位の業務に継続して3年以上受け入れる見込みのある有期雇用派遣労働者については、原則として、「通常の」労働者の募集に限りません(同法40条の5)。
派遣労働者を派遣禁止業務に従事させた場合、無許可の労働者派遣事業者から労働者派遣を受けた場合、派遣可能期間(組織単位の上限期間を含む)を超えて労働者派遣を受けた場合、偽装請負を受けた場合は、善意無過失の場合を除き、その時点で、派遣労働者に対して同一の労働条件での労働契約の申込みをしたものと看做されます。かかる違法行為の終了から1年間は当該申込みを撤回することはできません(同法40条の6)。
以上のほか、派遣労働者から苦情処理、同種業務に従事する労働者の業務遂行に必要な能力付与のための教育訓練の実施(派遣元から求めがある場合)、福利厚生施設の利用機会付与の義務があります(同法40条)。

12 子の看護休暇及び介護休暇を時間単位で取得させていますか?
小学校就学始期に達するまでの子を養育する労働者は1年につき5日(子が2日以上の場合は10日)まで子の看護休暇を取得でき、要介護状態の対象家族の世話をする労働者は1年につき5日(要介護対象家族は2人以上の場合は10日)まで介護休暇を取得できますが、時間単位での取得もできます(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律16条の2、16条の5)。

13 高齢者雇用対策を行っていますか?
定年(65歳未満)の定めをしている場合は、65歳までの定年の引き上げ、65歳までの継続雇用制度(希望すれば定年後も雇用する制度)の導入又は定年の定めの廃止のいずれかの措置を講じる必要があります。また、65歳以上70歳未満の定年の定めをしている場合又は70歳未満までの継続雇用制度を導入している場合は、①70歳までの定年の引き上げ、②70歳までの継続雇用制度の導入、③定年の定めの廃止、④創業支援等措置(高年齢者との委託契約、関連する社会貢献事業と高年齢者間の委託契約等)のいずれかの措置を講ずるよう努める必要があります(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律9条、10条の2)。創業支援等措置は事業場の労働者の過半数で組織する労働組合(かかる労働組合がない場合は労働者の過半数の代表者)の同意を得る必要があります。