法的支援:労務管理上のチェックポイント(その4)

2021.05.24

法的支援

今回は以下のポイントについて解説します。
⑧ 医師による面接指導のための労働時間を適切に管理していますか(労働安全衛生法66条の8以下)?
⑨ 有期労働契約の無期労働契約への転換に備えていますか(労働契約法18条、19条)?
⑩ セクハラ対策、マタハラ対策、パワハラ対策を行なっていますか(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律11条、11条の3、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律30条の2)?

8 医師による面接指導のために労働時間を適切に管理していますか?
週40時間を超える労働時間が月80時間を超え且つ疲労の蓄積が認められる労働者(新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務については週40時間を超える労働時間が月100時間を超える労働者)については医師による面接指導を行い、その結果を記録しておく必要があります。必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換(新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務については職務内容の変更、有給休暇の付与)、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずる必要があり、かかる医師による面接指導を実施するため、労働者の労働時間の状況を把握する必要があります。上記以外の労働者で健康への配慮が必要なものについても、医師による面接指導又はこれに準ずる措置を講ずるよう努める必要があります(労働安全衛生法66条の8以下)。

9 有期労働契約の無期労働契約への転換に備えていますか?
2013年4月1日以降に開始した有期労働契約が更新されて通算5年を超える場合、労働者が現在の有期労働契約の契約期間満了までに申し込むことにより同一条件(契約期間を除く)で無期労働契約に転換されます。一定の空白期間(6ヶ月。直前の契約期間が1年未満の場合は原則としてその2分の1の期間)があると通算5年の期間はリセットされます。また、①反復更新されて契約更新しないことが無期労働契約の終了と社会通念上同視できる場合や②労働者が契約更新を期待することについて合理的理由がある場合は、有期労働契約の更新を拒絶できません(労働契約法18条、19条)。

10 セクハラ対策、マタハラ対策、パワハラ対策を行なっていますか?
職場におけるセクシュアルハラスメント、セクシュアルハラスメント及びパワーハラスメントを防止するため、①事業主の方針の明確化及びその周知啓発、②相談に適切に対応するために必要な体制の整備、③職場におけるハラスメントに係る事後の迅速且つ適切な対応(マタハラについては職場におけるマタニティハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置を含む)等の雇用管理上必要な措置を講じる必要があります(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律11条、11条の3、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律30条の2)。
セクシュアルハラスメント、セクシュアルハラスメント及びパワーハラスメントの定義及び関連する政府の指針は以下の通りです。労働者がハラスメントの相談を行ったこと又は事業主による相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをすることは禁止されます。
・セクシュアルハラスメント:①対価型:職場において行われる性的な言動に対する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受けること及び②環境型:かかる性的な言動により労働者の就業環境が害されること(事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針(平成18年厚生労働省告示第615号))
(https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000605548.pdf)
・マタニティハラスメント:職場において行われるその雇用する女性労働者に対する当該女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、産前休業を請求したこと、産後休業をしたこと等に関する言動により当該女性労働者の就業環境が害されること(事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(平成28 年厚生労働省告示第312 号))
(https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000605635.pdf)
・パワーハラスメント:職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されること(事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年1月15日厚生労働省告示第5号))(中小事業主については令和4年3月31日までには努力義務)
(https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000605661.pdf)