中小企業は新型コロナ禍にどうやって立ち向かうか

2021.05.12

企業支援

中小企業は、新型コロナ禍にどうやって立ち向かうか
昨年来の新型コロナ禍の収束にはまだまだ時間がかかりそうです。中小企業が、この未曾有の危機を乗り越えて更なる成長を遂げるためには、どんなシナリオを想定しながら、どうやって立ち向かうべきでしょうか?

足元の景況感には大きなバラつき
最新の日銀短観の景気判断指数によれば、大企業製造業は+5ポイントと3期連続で改善して新型コロナ感染拡大前の水準まで回復傾向にある一方で、非製造業の景況感は大手でもー1ポイントに留まり、産業間で景況感の違いが明瞭になりつつあります。
中小企業の景況感に目を転じてみると、製造業が-13ポイント、非製造業がー11ポイントとなり、大企業に比べて製造・非製造業ともに、景気回復の実感は一段と弱いものとなっています。
さらに、新型コロナ禍による経済悪化の影響を一番受けているとされる、中小非製造業の景況感を、業種別で細かく見てみると、
改善がみられる分野とそうではない分野の2極化が進行中であることがわかります。特に、景況感が一番弱い「宿泊・飲食サービス」業界は、依然として下降傾向を示しており、経営が一段と厳しい状況にあることを示しています。(中小非製造業の景況観グラフご参照)

ワーストシナリオに備える
今後の景気はどうなるのでしょうか。その判断材料として、各種調査機関の経済成長予測を調べてみると、2021年は3.5~4.0%、2022年は1.0~2.4%と、見方に幅がでています。(実質成長率見通しテーブルご参照)
楽観的な見方をすれば、ワクチン接種が奏功して陽性率/重症化率が下がり、対面型サービス業界も回復し、大手企業の回復に合わせ中小企業のビジネス環境も改善し、消費水準は反騰して、経済活動水準はさほど時を待たずして元に戻る、というシナリオが考えられます。
また、慎重な見方をすれば、経済活動の制約は徐々に解除されプラス基調は維持されるものの、感染拡大防止に配慮した経済活動再開となり回復のペースは緩やかで、産業間格差、所得格差が進み、経済成長の不安定さは継続する、というシナリオが考えられます。
以上に対し、悲観的な見方をすれば、非製造業の対面型ビジネスの回復は難しく合理化に向けて企業合併や業界再編が加速し、その中ではサービス業の低賃金化と失業率の高止まりが起きて、経済回復は遅れる、というシナリオも考えられます。あるいは、新型コロナ禍の影響が大きいため、政府の中小企業の生産性向上施策と歩調を合わせ、デジタルトランスフォーメーション(DX)を中心とした構造的変革が一気に加速する、というシナリオでさえ考えられます。
経営者としては、楽観的な見方を持ちながらも、こうした複数のシナリオ、特に、ワーストケースも
視野に入れて足元のビジネスに対処していく必要があります。

自社の強みと消費者の行動変容を上手く組み合わせたアクションプランをつくる
新型コロナ禍という需要減少の長期化の中では、資金繰りが最優先事項であり、キャッシュを効率的に生み出すことが重要になります。そのため、売上とコストの両面から生産性の向上が必要ですが、以下では、売上生産性の改善に絞って話を進めます。
まず、売り上げの構成内容を精査し、売上金額と利益に一番貢献するものを特定して、取り組むべき優先順位を明確にしたアクションプランをつくることが求められます。自社の強みを絞り込むため、得意とする販売地域、重要なローヤル顧客、売れ筋商品と価格帯、合理的な顧客アクセス方法、売れる時間帯、など多角的に売り上げ内容を分析する必要があります。これにより、場所・顧客・商品・価格・アプローチ・時間を判断要素にして、売上と収益に最大効果を与える基本的なアクションプランを作成します。これに、新型コロナ禍に対応した新しい市場環境の変化を組み入れることで、効果的なプランに仕上げていきます。
消費者の行動変化として、従来の購買変化をより加速した動きがあります。ネット通販や出張出前サービスなど、いわゆる非接触型消費がすごい勢いで浸透しています。ネット情報では、あらゆる分野でユーチューバーが現れ、価値あるものから有象無象のものまで大量の情報が流れ出しています。このため、個別ニーズに合致した情報のカスタマイズ化、オンライン教育などで見られる情報の双方向化、オンライン情報と実体験の融合化など、ユーザー視点に立って本当に役立つように付加価値を加える質的な変化が起きています。
さらに、これまで見られなかった変化が出現しています。3密を避けることで孤独感が強まった結果、社会関係性の重要さが再認識され人やペットと「つながり」を深めたいという欲求の高まり、健康面では、定期的ではなくリアルタイムに自分の健康や自分の周囲の安全状態をチェックしたいという健康安全ニーズの芽生え、など新しい考えかたや行動が生まれています。
こうした足元で起きている消費心理や購買行動の変化を、自社ビジネスの強みに上手く取り込み、実際的なアクションプランをつくり展開していくことが、生き残りに重要となります。

最後に
中小企業の経営者は、大変苦しい状況にあります。そして、不況下ではどうしても悲観論が賢く見えます。しかしながら、経営者の気持ちの持ちかたとしては、最悪シナリオを念頭に置きながらも楽観的態度を持って周囲の人たちを鼓舞していくことが、適切なビジネスマインドだと思われます。
自社の持つ有形無形のアセットを今一度見直し着手すべき優先順位を明確にした上で、目の前で起きている変化と結びつけて考えることが、新たなビジネスチャンスの発見につながります。
勇気と知恵をだして今の苦境を何とか切り拓こうと奮闘努力されている経営者の方々に、当社は、一緒になってビジネス改善に知恵を絞り出して支援をおこなうことで、是非お力添えをしたいと考えています。ご興味を持たれた方からのご連絡をお待ちしています。 (完)

中小非製造業の景況感グラフ

実質成長率見通しテーブル